え〜と・・・今の状況整理。 朝起きたら知らない場所にいた。 理由は良くわからない。 いきなり盗賊に殺されそうになった。 どうやら俺が変わった服を着ているかららしい。 で、いままた新しい三人組に声をかけられている。 さっきと違うところがあるとすればその三人組はむさいオッサンどもではなく、美人や可愛いといった部類に入る女の子だということだ。 「見たところ腕が立つわけでもなさそうだが・・・一体どのような方法をお使いになられた?」 「立てますか?ほら、風も手を貸して差し上げろ! それにしても災難でしたね。このあたりは比較的治安はいいほうなんですが・・・」 「これはうっかりしていました。お兄さん、怪我はないですかー?」 三人は口々にすき放題いいながら立ち上がるのに手を貸してくれた。 しばらく座って休もうか、とも考えていたが、折角手を貸してくれているし座ったまま話すのも失礼だろう? そう考えて吸おうと思っていたタバコをしまい、立ち上がることにした。 「ありがとう、おかげさまで怪我はないよ・・・しかし・・・比較的、ね〜・・・」 とりあえず俺の知る範囲で起きぬけに身包み剥がされそうになる場所は日本にないんだけど・・・ そうだそうだ。さっきはいきなりナイフなんぞ突きつけられて忘れちゃったけど、ここがどこだか聞かないといけない。 だが、俺は迂闊すぎた。 「えっと・・・風ちゃんだっけ?ここって一体どこ・・・」 「・・・ひへっ!」 「・・・!!貴様ぁー!!」 「・・・え?」 何が起こったのかまったくわからなかった。 さっきまで穏やかだった周囲の空気が一変する。 風圧を感じたときにはすでに首筋に一振りの槍が当てられており、体は今にも射抜かんとする白い女の子の眼差しに押されて微塵も動かせる気がしない。 「お主、どこの世間知らずの豪族かは知らんがいきなり初対面の者の真名を呼ぶとはどういう了見だ!」 「・・・て、訂正してくださいっ!」 マナ?マナってなんだ? さっきのチンピラとは段違いの殺気に当てられて思考も半ば停止状態だ。 なんだって俺は殺されかけているんだ? 「ちょっと待っ・・・え?」 「訂正なさい!」 メガネの女の子からも殺気を感じる。 ・・・なんだ?もしかしてマナってなんかすごい大事な人とかじゃないと呼んじゃいけないとかそういうやつか? 「すまん!訂正します!本当に申し訳ございません!なのでお願いだから槍を!槍を引いてもらえないか!?」 「・・・結構。」 そういうと、白い女の子は槍を引いてくれた。 「はふぅ・・・いきなり真名で呼ぶなんて、びっくりしちゃいましたよー。」 びっくりしたのは俺も同じだよ。 けど真名か・・・これ知らなかったら街中でも殺されかけてたのか・・・助かったといえば助かったのかな? 「うん、俺もびっくりしたけど・・・本当に悪かったね。マナって風習、知らなかったんだ。 あと、知らないついでに聞きたいんだけどさ・・・ここ、どこ?」 「ここは陳留の近くだが・・・お主、その格好を見るにどこかの貴族かなにかの一員のようだが・・・ どこの出身だ?」 「俺?俺は日本生まれだけど・・・」 「にほん?稟、心当たりはあるか?」 ・・・え? 「いや、心当たりはないわね。南方の国かもしれないけれど・・・」 ・・・ここ もしかして日本じゃないのか? 「・・・まぁ、あとのことは陳留の刺史殿に任せるとしようか。」 「そうですねー」 メガネの女の子が指す方向には確かに大きな土煙が上がっているが・・・ ありゃ半端な人数じゃないぞ・・・ いや、待ってくれ。 ここ、本当に日本じゃないのか? 陳留?刺史? 「って本当にいっちゃうのか!せめて街まで連れていって欲しいんだけど・・・」 いい年したオッサンがこんなお願いするってのも情けないが、背に腹は代えられない。 が、その願いもむなしくスルーされた。 「我々のような流れ者が貴族を連れて歩いていると、よからぬ想像をされやすいのですよ。」 「それに官が絡むと面白いものも途端に興がそがれてしまうのでな。しからばごめん!」 「ではでは〜」 「お〜い・・・・・・はぁ・・・行っちゃったよ・・・しかしあれだな。ここが日本じゃなくて、盗賊がいて、達人みたいに強い女の子がいて・・・ で、陳留だろ?・・・はぁ・・・嫌な予感しかしないなぁ・・・」 俺の予想があってるのであれば、携帯電話が通じない理由も、今着てる制服が変わっているといわれる理由も納得がいく。 納得・・・いくけどさぁ・・・ まさかな。 そうだ、きっと間違いのはず・・・大掛かりな映画かなにかの撮影中なんだきっと・・・ しばらくすると騎馬隊とその上に広がる大きな旗が見えてきた。 「陳留の刺史で、曹の文字の旗。騎馬隊を率いてくるってことは・・・はぁ・・・間違いないよな〜・・・」 カメラも見当たらないし・・・ こういうときの嫌な予感って大体当たるもので。 こうなって欲しくないな〜って思うことは大体現実になるもので。 「・・・言葉が通じるだけ、良しってことかな〜・・・」 俺の記憶に間違いがなければ。 それにさっきの女の子達の話が間違いじゃなければ。 ここは、おそらく平成の日本じゃなくて・・・ 「華琳様!こやつは・・・!」 「そうね・・・聞いた話では中年の男ということだったから・・・連中の一味という可能性はあるわね。」 「では華琳様、引っ立てましょうか?」 あ〜、名前で判断しようと思ったけど、そうか、真名ってやつか。 「そうね。・・・けれど逃げる様子もないということは・・・連中と関係ないのかしら?」 「こんな妖しい格好をしていて連中と関係ないはずがありません!」 むこうはむこうで話があるようだけど・・・全然見えてこない。 だけど一応確認しないと・・・ 「・・・あのさ、ちょっといいかな?」 「・・・何?」 リーダーっぽい少女が怪訝そうな顔でこちらをみる。 「お嬢さん方が陳留の刺史ってことで間違いないよね?」 「えぇ、そうよ。あなた、見かけは妖しいわりに私のことは知っているようね?」 リーダーっぽい女の子は高圧的な物言いのなかにも気品を感じさせる。 さすが、若いのに刺史になるだけのことはあるってことか。 それに・・・俺の予想が間違っていなかったらこの子はきっと・・・ そんな思惑をいってか知らずか、金髪の女の子は続ける。 「では私がこれからしなければならない事もわかるはずよね?春蘭、引っ立てなさい!」 「はっ!」 あ〜あ、やっぱりそうなるのか・・・ 「半数はこのまま捜索を続行しなさい、もしかしたら残りの連中がいるかもしれないわ。 残りの半分はこのまま帰還するわよ」 「「はっ!」」 こうして俺はお嬢さん方に引っ立てられて街に行くこととなった。 俺を待っているのは天国なのだろうか。 それとも 地獄なのだろうか・・・